【5】「不思議」だらけの不動産取引
不動産営業との「不思議な縁」
↑前回の話はこちら
結局、加害者がゴネ始めたもらい事故の示談交渉は諦めた。
結果として金銭的には損をした。
理不尽だったが「家を売って引っ越す」と決めた氷河期夫婦は、この頃はもうサバサバしていた。
「新しい車を買う気分ではないし、車がなくても不便のない所に引越そう!」
そう決めた翌日、氷河期妻は同じ街の不動産会社に電話をした。
その不動産会社には以前も「売却の相談」をしたことがあった。
でも当時は不動産市場も株式市場も低迷していた。
氷河期夫がローンを組んだ小さなマンションの評価額も落ち込んでいた。
そうこうしているうちに氷河期夫が地方に「出向」とになり、売却話は立ち消えになったのだ。
さっそくその日の夕方、営業担当者がやってきた。
子ども時代に近所にいた?
玄関のドアを開けると、以前の売却話の担当営業が立っていた。
「あの時の...ですよね?」
互いに確認した。
こうして突如決めた「自宅売却」によって再会した不動産営業。
この人物と氷河期妻には「不思議な縁」があった。
不動産売買の案件で出会ったのは東京近郊だったが、2人とも地方の出身だった。
正確には、担当営業は地方出身だが、氷河期妻も昔その街に住んでいたことがあった。
まだ20世紀で、お互い10代で数百キロも離れた片田舎だ。
しかもただ同じ街というだけでなく、当時氷河期妻の実家があった近隣に、担当営業の親友の家があり、毎日のように近所にいたことが分かったのだ。
「いや~不思議ですね...」
この「不思議な縁」がその後も続いていくことは、この時はまだ知らない。
思い付きの「自宅売却」計画
数年ぶりに再会した担当営業と昔話をしてから、氷河期夫婦は自宅の売買の仲介契約を取り交わした。
しかし、思い付きで決まった自宅売却だったから、先行きは不透明だった。
不動産売買に動きのある時期(春や秋)ではなかった。
それにもまして、氷河期夫婦の自宅はあまり人気のある路線ではなかった。
その頃、東京都内の人気エリアは「アベノミクス」によって価格が上昇していた。
でも、郊外では売買は活況ではなかった。
さらに人気のないエリアなのにDINKSか一人暮らし向けの間取りなので、需要があるのかも未知数だった。
【第5話まとめ】
子ども時代に同じ地方の街に住んでいた担当営業と氷河期妻の「不思議な縁」。しかし自宅売却は、時期もエリアも間取り(広さ)も、売却に有利な要素はなかった。