2022-12-09 【17】ホワイト企業で復活したゾンビ社員 運気好転した話 努力よりもタイミング ↑前回の話はこちら 氷河期世代の人間は親世代から「努力しろ」と言われて育ったケースが多い。 世代内の競争も激しかったから、努力の中でも厳しい努力を強いられた。 ふたを開けてみれば世の中に出たのは、バブル崩壊後。 すでに社会にいた人間は「保身」のために氷河期世代を締め出し、「非正規」という枠を作り出し奴隷としてこき使った。 「正社員」なら勝ち組かというとそうでもなくて、いわゆる「ブラック正社員」という「非正規」に負けず劣らずの地獄を見た者が多い。 氷河期夫がブラック企業から転職した先は「ホワイト企業」だったが、もともとそうだったわけではない。 前に書いたように「高橋まつりさん」の事件の後、ブラックを改革すべくテコ入れが入ったタイミングだったのだ。 ゾンビが人間に戻るとき 氷河期妻はそれまでの生活でほぼ「ゾンビ化」した状態の夫しか見ていなかった。 だから新しい職場でどんどん「人間化」してゆく様子を半分おもしろがっていた。 でも残りの半分は正直、目を疑った。 ゾンビ化した状態の者には「喜怒哀楽」の感情がない。 だから、氷河期夫の顔は表情に乏しかった。 それは低スペックのロボットが高度化してだんだんと表情豊かになっていくプロセスを思わせた。 ホワイト企業への転職後、氷河期夫には「欲しいモノ」がひとつできた。 それまでのゾンビ状態においては、欲しいモノなどという前向きな感情はなかったのだ。 氷河期夫はちょっと高めの腕時計を買うことにした。 高めといってもピンからキリまであるが、販売価格20万円程度の時計だ。 それは氷河期夫が、氷河期世代として歩んできた人生の中で初めて買った唯一の高級品だった。 その時買った時計はそれから数年経って2~3割も価格が上昇したので、良い買い物ではあった。 転職先にはパワハラ役員もセクハラ上司もいなかった。 そこで氷河期夫はやっぱり人生で初めて、のびのびと変な気をつかうことなく働くことができるようになった。 人権が守られて、普通に発言することができる。 またサービス残業もなく、超過勤務分は時間外手当が支払われる。 当たり前のこと当たり前ではなかったのが、それまでのブラック企業だった。 そして今もなおそのような殺人的なブラック企業は存在する。 【第17話まとめ】 高橋まつりさんの犠牲によって改革されたホワイト企業で、それまでゾンビ化していた氷河期夫は人間らしい喜怒哀楽を取り戻していった。