【10】太陽の光を浴びた「ゾンビ」
悪魔だらけのブラック企業
↑前回の話はこちら
毎日太陽の光を一定時間浴びることは抑うつ状態の改善にも有効だと以前聞いたことがある。
今まで何度も触れてきたが氷河期夫はブラック企業で「ゾンビ化」していた。
パワハラやセクハラもあった。
ちなみにセクハラというのは、男性上司からの「わいせつ行為」だった。
被害者は氷河期夫だけではなかった。
だから社内外で隙を狙って
「若手男性社員の股間」
を狙ってくるセクハラ上司のことはじわじわと噂にはなっていた。
でもそのことを公に訴えたり、処分を求めたりする人はいなかった。
パワハラ上司はひとりだけではなかったが、中には密かに追い出された経営陣もいた。
このパワハラ役員は部下がパワハラを苦に自殺したことを自慢するような人間だった...
当時の氷河期夫の無気力さ、無欲さ、自信のなさは何もかもこのブラック職場での経験から形成されたものだった。
太陽の光パワーで「転職」を決意
氷河期夫の「ゾンビ度」は相当高かった。
それが、たまたま引っ越してきた「東向きの部屋」に住み始めて2週間後のある日、突然
「転職活動してみようかな」
と言い出した。
ブラック企業の過酷さというのは、言葉では説明しづらい。
そんな経験をしたことがない人間は、
「そんなにひどい職場何で辞めないの?転職すればいいじゃん」
と言うかもしれない。
でもゾンビ化した者はそうたやすく「前向きで生産的」な思考にはなれないものだ。
そういう生きてゆく活力をすべて奪い無力化してしまうのがブラック企業とパラハラ・セクハラだ。
氷河期妻の方は、今まで何があってもブラック職場から逃げ出そうとせずゾンビ化して生き長らえている夫を見てきた。
だから「東向きの部屋」で早朝から太陽の光を浴びているうちに意識が急激に変わった氷河期夫の姿は驚異だった。
追突事故の件では、より怒り心頭に発していたのは氷河期妻の方だった。
ゾンビ化した人間は独特の「諦観」と「鈍感力」が磨かれているから「怒り」に対してもそれほど感受性がないのだ。
だから賃貸物件に引越してくるまで、氷河期夫には目に見えた変化はないように見えた。
唐突に転職を決意した氷河期夫。
その変化の始まりとして、思わず「え!?」と驚く「臨時収入」現象が起き始めた。
【第10話まとめ】
セクハラ・パワハラの巣窟だったブラック企業で「ゾンビ化」して生きていた氷河期夫。東向きの部屋に引越して間もないある日、転職の決意をした。