【9】「東向きの部屋」で人生が変わる?
東向きの部屋の威力
↑前回の話はこちら
不思議な成り行きで引越してきた賃貸物件の間取りは1LDK45㎡ロフト付き。
いわゆる「デザイナーズ物件」というやつだった。
東西に長辺の四角形で、寝室の東壁面はすべて窓だった。
氷河期夫婦はどちらもそれまで東向きの部屋に住んだことはなかった。
実際に生活してみて、それがどういうものか早朝から実感した。
つまり、晴れの日は日の出からすさまじい陽光が降り注いでくるのだ。
それまでの住まいの寝室は西寄りの南向きだった。
あまりの眩しさに、窓には遮光カーテンを付けたが、さらにその上部の窓は構造上取り付けられない。
妙なところにまで窓があるところが、デザイナーズ物件ならではだった。
そのため氷河期夫婦は引越しの翌朝から、強制的に早起きにならざるを得なくなった。
「早起き」と「運気好転」の相関関係
売却した郊外のマンションに住んでいた頃、氷河期夫婦はともに夜型生活だった。
氷河期夫の勤務先は始業時間が遅めだったので自宅を出るのも朝8時半ごろ。
残業(もちろんサービス残業)も多く帰宅も遅かった。
氷河期妻はフリーランスだったが、クライアントの関係でやはり遅めスタートが多く、また元来「夜型」タイプでで朝は弱かった。
しかし、それまでの生活習慣が否応なしに強制変更されるほど威力を発揮したのが、恐るべき東向きの窓だった。
元々朝型の人だったら丁寧に作った朝食だとか、ジョギングでひと汗かくとか、ポジティブな活動をするのだろう。
でもそれまでの夜型からいきなりの早朝起きになった氷河期夫婦には、いきなりレベルの高い行動は無理だった。
ただ陽を浴びながらボーっと過ごしていた。
氷河期夫に変化の兆し?
その頃になると、引越しの原因となった悔しい追突事故や氷河期夫の前厄から始まった陰鬱な出来事の記憶も薄らいでいた。
逆に、見ず知らずの街で始まった新生活によって、冒険しているようなワクワクした気持ちになっていた。
氷河期夫はそれまでの10年余り、ブラック企業で「ゾンビ化」することによって生き延びていた。
サービス残業、パワハラやセクハラに耐え忍んで働き続けたことで、労働意欲をすっかり失い、流されるように生きていた心境に変化が起き始めていた。
【第9話まとめ】
たまたま寝室が東向きのデザイナーズ物件に引越してきた氷河期夫婦。早朝からまぶしい部屋のせいで強制的に早起きになるとともに、気持ちにも変化が生まれ始めていた。